遭難の主な原因は道迷い(40.5%)、滑落・転倒・転落(33.1%)、病気や疲労(12.7%)

警察庁は毎年7、8月に前年度に起こった山岳遭難の統計を発表しています。これによると2010年に国内で発生した山岳遭難中の事故件数は1942件、遭難者の数は2396人で、そのうち294人が死亡・行方不明となっています。

毎年夏に発表されるデータ

この数字は同庁が統計を開始した1961年以降で、発生件数、遭難者数、死亡・行方不明者のいずれもワースト記録となっています。年齢別に見ると中高年(40歳以上)の遭難者が1821人、うち死者・行方不明者が265人と山岳遭難の大半を占めています。

近年の特徴としては、遭難者に占める20〜30代の割合が急増していることが挙げられます。2008年から2010年の年齢別遭難者数の増加率を見ると、2008年から2009年は20〜24歳の増減率がマイナス12.3%となっているものの、25〜29歳は37.9&、30〜34歳は34.2%、35〜39歳は25%の増加となっています。

さらに翌2009〜2010年になると、マイナスだった20〜24歳の増減率も一転して26.3%の増加になったのをはじめ、25〜29歳は0%(前年と同じ)、30〜34歳は14.7%、35〜39歳は30.5%と、たった2年で若い世代の遭難者が急増しているのです。

この背景には登山をファッションの一つと捉える(ex:山ガールの流行など)世代が増え、しっかりとした計画を立てないまま、気軽な旅行感覚で登山に臨むことが多いことが挙げられます。

また登山ブームのなか、高尾山など近場のコースで起こる「遭難騒ぎ」が増えていることも数字の悪化に繋がっています。お手軽コースでちょっと道に迷っただけだとしても、一旦救助要請が入ってしまえば、それは統計上「遭難事故」とカウントされてしまうのです。携帯電話の普及に伴うコンビニ感覚の安易な救助要請も統計をさらに悪化させる一因という意見もあります。

遭難の主な原因としては、道迷いが最多で40.5%となっており、以下、滑落・転倒・転落による怪我の33.1%、病気や疲労の12.7%となっており、これら3つで全体のおよそ90%を占めています。

冬の登山で気をつけたい風雪とホワイトアウト

雪山を登山する場合、風雪に遭遇する状況は少なくありません。晴天時のみに行動をするのでは、登頂の可能性は大きく低下してしまいます。行動するパーティの経験や鋤によって差はありますが、特別なリスクがなく、普通に雪が降っているだけの状況なら、行動するケースのほうが多いでしょう。

風雪でも樹林帯なら行動可能

稜線では吹雪いていても、稜線の風下側に入ったり、高度を少し下げると風が弱まり、単に雪が振っているということもあります。無雪期の雨とは異なり、ウェアで防御できていれば、雪で体が濡れることはありません。つまり、雪山では雪が降っていても、ある程度までは行動が可能です。

風雪が本当に危険となるのは、雪よりも極端な強風になるケースのほうが多いです。気象データ上では、山では人間が吹き飛ばされるくらいの強風が吹いているとされています。強風で前を向けない、あるいは足が前に出せない状況も冬山では少なくありません。

前方への歩行が難しいほどの強風・風雪なら、転倒・滑落のリスクが高くなるので、速やかに避難したほうが無難です。山の地形が分かっていれば、稜線の風下側に回れる場所、支尾根から樹林帯へ下れる場所など、どこへ避難するのが安全かが分かるため、計画時の下調べが重要となります。避難したつもりがあまり安全ではなく、そこも風雪を受ける場所だったら、気象遭難の典型的なパターンとなってしまいます。

風雪への恐怖で気持ちの余裕がなくなると、体への注意が散漫になるため、凍傷低体温症に陥ることがあります。ひとりが凍傷や低体温症になると、パーティ全体が危機的状況になります。初級者がいる場合は風雪での行動は控えたほうがベターですが、あえて行動する場合には、十分な注意とサポートを心掛けるようにします。

雪山では「ホワイトアウト」にも注意が必要です。ホワイトアウトとは、雪面に濃霧が立ち込めて、自分の足元が分からないほど視界が悪くなる状況で、スキーシーズンや気温がやや高くなる春先に頻出する現象です。これはとはまったく別の減少ですが、風雪のために視界が悪くなった状況も同じくホワイトアウトと呼んでおり、こちらは厳冬期でも起こります。

ホワイトアウトに遭遇するとほとんど何も見えなくなるため、歩いているときに何か危険なところに踏み込んで墜落するのではないか、と心理的に非常に不安定な状態に陥ります。また、雪崩の危険に対しても判断を下すことができなくなります。

近くに雪庇や雪崩の危険があるときは、行動を中止して待機するのが賢明です。雪庇と雪崩以外には切迫した危険はないので、行動を続ける人もいます。その場合は、地形図とコンパスで進路を決めていくコンパスナビゲーションの方法で進みます。GPSがあれば進路の決定は更に簡単になります。しかし、先を急ぐ必要がない場合、ガスが晴れるまで安全な場所で待っているのが一般的です。

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