低体温症から自力で回復できる安全限界は34℃

体内の熱源維持が重要

近年、北海道トムラウシ山や北アルプス白馬岳における遭難死などをきっかけとして、国内でも低体温症の知識が広まってきました。低温と風は体から熱を奪いますが、濡れた衣服は空気の25倍の速さで熱を奪うので特に注意が必要です。雨や雪だけでなく、発汗にも気を配る必要があります。

低体温症の症状を判断するポイントは、震えと意識です。体の深い部分の温度を「コア体温」といいますが、このコア体温が36℃になると、寒さを感じて震え始めます。震えは35で最大となり、周囲に無関心な状態となります。35度以下の状態を低体温症といいます。

自力で回復できる安全限界は意識障害が始まる34℃といわれています。この段階にくるとよろめいたり、ろれつがまわらなくなります。32℃で震えは止まり、危険な状態の境界となります。すなわち、これ以上悪化すると、意識がなくなり、呼吸現象、心拍微弱、最悪の場合、心肺停止に至ります。

低体温症では予防が重要です。まずはウェア選びです。下着とアウターは速乾性と保湿性のあるものを着ましょう。木綿は乾きにくいため、登山にはNGです。ウェアの一番外には、防水性と透湿性があるゴアテックスなどを選びましょう。寒さを感じたら、早めに重ね着をします。重ね着は空気の層が何層にもできて体を温めます。首筋、頭、手なども防寒具で温めます。ダウンジャケットやチョッキはぬれると保湿性が低下するので、雨や霧のときに一番外に着てはいけません。外気が乾燥していれば、上に重ね着をするのはよいでしょう。

すぐにエネルギーになる炭水化物をこまめにとって、体内の熱源を維持します。震えて発熱できるエネルギーを、体内に蓄えておくことが重要です。仲間の体調に注意を払い、低体温症の症状は見られないか、互いに観察するようにしましょう。天候の変化にも気を配る必要があります。

それでも低体温症になってしまった場合の処置としては、小屋などに遭難死、ぬれている衣服を、乾いているものと交換します。それから糖分の入った温かい飲み物を飲みます。体温が34℃程度までの軽い低体温症のときは、外の熱源に頼らずに自分で回復できる場合が多いので、どのような温め方でも大丈夫です。わきの下、首、肩、素頚部など皮膚の表面に近い太い血管を温めます。

体温が34℃以下の場合、急な加湿は避け、シュラフに入れて保湿し、安静を保ちます。急に手足を加湿すると、冷たい血液が急に心臓に流れ込むことで、重篤な不整脈を引き起こしてしまうことがあります。体表面の加湿によってコア温度が低下してしまうためで、アフタードロップと呼ばれます。

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